日曜日, 6月 17, 2012

re: kumiさんのメール


・・日記連投すみませんm(_)m

マイミク kumiさんは、ひょんなことから知り合い(ボビーウーマックのチケットが取れなかった僕が、1枚余ってmixiコミュに書いていた彼女から、ゆずっていただいたという^^)、おたがい原発反対者であることがわかり、情報交換などさせてもらってます。

首相官邸前抗議のことを話したら、熱心に参加されるようになりました。いま、舞台公演がある7月アタマまでは金曜抗議に参加できない僕に、メールで様子を知らせてくれます。

一人で読むにはもったいない内容なので、おゆるしを得て転載させていただきます。昨日(一昨日か)と、先週の抗議の様子です。ぜひ、ぜひご覧ください。

※ ほんとのメールには絵文字がたくさんあるのですが、再現できないため、ニュアンスが変わってたらすみませんm(_)m

>kumiさん、ほんとに、どうもありがとうです!

 * * * * * *

(6月8日 金)

参加しまして、今、帰路です。

毎回のことですが、私は、スピーチで、うるっときてしまいます。

今日は今までよりも、再稼働の危機が迫っているのと、私の参加時間が遅かったのもあるのか、今までで、一番熱がこもってました。

怒りのあまり、声が叫びになっていて、言葉が聞き取れない方が多く、しかも、時間も無く少ししか聞けませんでしたが、一つだけ印象に残ったのが、福島出身の女性のもので、事故後、地元に戻れなくなり、このまま永遠に帰れないかもしれず、福島以外も水も空気も食料もすべて危険になってしまったということを言い、悔しさと悲しさのため、「福島を返せ」と、涙ながらに何度も叫んでいるスピーチでした。

その声が切実で、頭では私もわかってるつもりですが、福島に帰れなくなってしまったという悔しさや悲しさ怒りは、出身者にしたら、どんなにぶつけても、消えるものではない痛みなのだろうなと、改めて身に染みました。

参加しているメンバーも、今までよりも、様々でした。

子育ても終わって、孫がいるようなおばあちゃん4人組が、横断幕を持って反対していたり、定年したおじいさんも、一人で参加し、反対コールを一生懸命叫んだりしてました。
私が帰る時には、急いで、駅から階段を上る、娘を抱いた若い母親がいました。
少しでも、参加したかったのでしょうね。

ここまで反対されて、なぜ再稼働するのか、なぜ政府が国民の事を見ないのか、心から怒りますね。

そうそう、今日は、参加者4000人だったようです。

日本がこんなに愚かな国だったとは、知りませんでしたし、自分がこんなことをさせられるはめになるとは、と、参加者皆さんが思っていますよね。

ではでは、舞台の方も頑張って下さいね。

 * * * * * *

(6月15日 金)

今回は1万1千人とのことでしたね。

これまでにない人数です。
やはり、普通に考えて、国民がダイレクトに働きかけられることは、こういうことしかないですし、おとなしい日本人が、ここまで強く反対し、それが増えてるということは、みんなが、本気でいやだと思っている何よりの証ですよね。

ですが、今回は、増加に伴って、列がかつてない程長くなりすぎてしまい、後ろの方には、スピーチのスピーカーが足りず、何も聞こえない状況でした。
なので、後方は、勝手に拡声器で、コールをしている感じでした。すごく残念ですが…。

私は、はじめ、そっちに誘導されましたが、それじゃちょっと意味無いなあと思い、前方に進み割り込みました^^;

それから、今日はまた、色々な人たちを見ました。
まず、向かう途中での出来事です。
私が乗ったのは、新宿三丁目からで、議事堂前まで6つくらい?なのですが、途中の赤坂見付で、何気なく乗ってきた親子連れがいました。
30代くらいの母親と、小1くらいの息子と、幼稚園くらいの娘の3人です。

何も考えず見ていた私でしたが、なんと、議事堂前で降りました。抗議に、参加したようでした。

こんな時間(夜7時すぎ)に親に連れられ、きっと、いつもはお風呂に入ったり、テレビ見たり、ゆっくりしてるような時間だろうに、政府が悪いばっかりに、こんなところに連れられて、可哀相そうにな…と、胸が痛みました。

そして、現地でも、回を重ねるごとに、色々な層の方が増えてる印象です。

お化粧も服装も派手目な若い女性が、一人で、ちょうど私とおなじころ、駅に降り立ち、なんと、同じ方面に向かい歩いて行きました!
意外でしたが、こんな外見(失礼ですが)なのに、ちゃんと考えているのだなと、うれしく思いました。

そして、普通に、きれいで清楚なOLさんも、反対のメッセージを書いたカードを持って歩いていました。

それから、始めのころは、ツイッターというツールでの呼び掛けだったせいか、そういう媒体からは疎遠であろう、ほとんど見かけなかった年配者が、今は、大勢いらっしゃってます。

ほかにも、私のいた時間には、国会議員が2名スピーチしてました。

…現地でのスピーチについては、明日、改めて送りますね!

野田!! 上島竜兵の20年後みたいな顔しやがって、バカを言うなら、まず、熱湯に30秒入ってから出てこい!

とは、私の怒りです。

ではまた送りますね!

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[てんさい]西條さんの連投ツイ

「人を助けるすんごい仕組み」で知られる、「ふんばろう東日本」 http://fumbaro.org/ の西條剛央さん。その取り組み、アイディアはほんと目から鱗です。読まれたかた多いと思いますがこちらを。→ http://www.1101.com/funbaro/ (ほぼ日刊イトイ新聞、2011年6月)

西條さんは「ふんばろう」の活動に色をつけないため、原発関連については戦略的に口をつぐまれてます(これは正しいと思うし、一部の「隠れ蓑」的な文化人の態度とは全く異なっています)。が、先日の野田氏の再稼働宣言(6月8日)の夜のツイートで、言葉があふれ出されていました。

「野田さんのこのたびの再稼働の決定については、僕は死ぬまで度の過ぎた愚行として悪口を書き続けようと心に決めた」

「原発と津波は違います。もう一機ドカンといったら輸出もできなくなり日本全体が沈みます」

断固支持!

僕自身、原発に反対なのはリスクが高すぎるからで、利権云々は二の次。不当に金儲けしようが、なんでも電気代に乗せようがいいけど、他でやってくれと。(まぁよくは無いし、いろいろ結びついてるので簡単には言えませんが。) その意味で、ここでも西條さんが言う「構造構成主義」の考えは理解できます。

RTやリプライを含め、ツイートを再録させていただきます。

 * * * * * *

http://twitter.com/saijotakeo
http://twilog.org/saijotakeo/date-120608/asc (6/8のツイログ)


原発についてはあえて発言してこなかったけど、この再稼働決定はおかしすぎると思う。目が悪いのにバスを運転していてとりかえしのつかない大事故起こした人が「数年後にはよくなる予定なんで」と言ったから運転再開を許可するのと同じぐらいバカなこと。これでは何でもありではないか。
posted at 19:20:01

それをやったらおしまいよ、ということをやったという意味では、世界中が反対したのに生物兵器があるとかでっちあげてイラク戦争に突入したときのアメリカと同じ。少なくとも僕は死ぬまでブッシュの悪口を書き続けると心に誓った。
posted at 19:27:26

そのときはパワーで押し切っても、暴挙は汚名として歴史に刻まれる、ということを為政者におもいしらせる必要がある。暴挙を語り続けること。それはこうした“暴挙”に対して、市民が生み出せる抑止力なのだと思う。
posted at 19:29:52

その意味で、野田さんのこのたびの再稼働の決定については、僕は死ぬまで度の過ぎた愚行として悪口を書き続けようと心に決めた。
posted at 19:33:58

僕はどこの党を応援しているとかそういうのはまったくないのだけど、イラク戦争に踏み切ったアメリカが必ず失敗して後悔することになると確信してまさにその通りになったように、民主党はこの決定によって必ず敗北して後悔することになるだろう。
posted at 19:36:28

震災が教えてくれたのは、常に想定外のことが起こる、ということです。~さえなければ、といった事後的な言明には意味がないんですよ。RT @fukushimanohito 電源さえ喪失しなきゃ今回だって事故に至らなかった。..電源確保の道筋が立ったら再稼働するべきでは。
posted at 20:05:20

『人を助けるすんごい仕組み』の最後には書いたけど、賛否の信念対立に陥らないための構造構成主義の考え方はこうです。リスク管理や安全に関心がある人は原発をすぐに止めるべき、という意見になる。他方で電気や経済を回すことに関心のある人は原発は再稼働すべき、という意見になる。
posted at 20:07:36

こうした議論は、すぐに賛否両論に二極化しがちだが、それ以前に重きを置いている関心が異なるのだ。その関心が暗黙裏に前提となっていて、どちらの方が良いとか悪いとかいう話になる。ではどちらの関心が妥当なのか? あるいは双方の関心をうまく満たすことはできないのか? 
posted at 20:12:18

双方の関心を包摂したものとして「安全に電気を充足させることができれば、それにこしたことはない」という見解には、利権のある人以外は同意するところだろう。そして実際、この厳しい冬を原発54基中2基しか動いていないのに余裕で越してしまった。
posted at 20:18:39

節電やオフピークで十分夏も越せるだろう。震災直後の節電は本当にすごかった。5割以上はカットしていたのではないか。原発なくても電気は大丈夫、ということだ。
posted at 20:21:29

電気が足りないというのはへ理屈だというのはもうわかっているけども、結局、利権のある人の生活をどうするのか、ということなのだろう。それで生きている人がいる以上、そうした関心を持つ人がいるのも自然なことだ。
posted at 20:23:41

ではどうするか? 再稼働させなくともすぐに安全になるわけじゃないので、補助金は減額しても打ち切らないようにする。原発の隣に火力発電所でも立てることで送電線等のシステムはそのまま使って電力を確保する。そうすることで利権を守りたい人の関心と安全確保の関心の双方を満たすことも可能になる。
posted at 20:35:01

このように構造構成主義の考え方にのっとって考えていけば、信念対立に陥ることなく、原発の問題を建設的に進めることができるのではないか、と思うわけです。
posted at 20:41:35

それはそれとして、さすがに今回の再稼働は、その決定内容もさることながら、決定に至るまでのプロセスと手続きが無茶苦茶すぎる。安全対策を終えてからならまだしも、そのうち対策する予定です、という段階で、国民の同意も得ずに再稼働させるのでは、それこそなんでもアリになる。
posted at 20:46:21

僕は単純な賛否の話をしているのではない。個人の思いを語っているのでもない。そうではなく、構造構成主義の観点から、異なる関心を調停した上で話を建設的に進める方法について書いている。
posted at 20:52:29

もちろん、いろいろな見解があってもよいと思うが、こうした理路に対して、単なる反対や感情論をぶつけてもあまり意味はない。ここで書いたような関心を調停しながら進める方法よりもより妥当な方法があれば、それを提案しあうことで物事を先に押し進めることができる。
posted at 20:56:55

「方法の原理」に沿って、状況と目的を踏まえてより有効な方法を提案しあうこと。また物事の善し悪しを論じたり、価値判断をするときは、必ず特定の関心を前提としているということを自覚しつつ、関心の妥当性を問いあうこと。
posted at 21:00:51

あるいは双方の関心が一定妥当な場合には、それらの関心をうまく包摂するような問いを立てて進めること。そうした理路に基づく民主主義こそが、ポスト311の時代に生きる僕らが実現すべき「民主主義2.0」だと考えている。
posted at 21:02:26

@fukushimanohito 先ほどの反論にはなっていないですね。またあなたの言う「合理性」はすべて経済を回すという関心のもとでしか成立していない、ということを自覚してもよいと思います。これだけ取り返しのつかないことが起きてしまった、ということはどう考えるのでしょうか?
posted at 21:07:15

@fukushimanohito 再稼働云々ぬきに原発の安全を高める努力をするという意味では「失敗から改善を図る事が重要」というのはそうだと思います。「野田氏のやり方が不味いというのはそのとおりですが」という点では同じ見解ですね。冷静に議論してくださってありがとうございます。
posted at 21:09:32

RT @kanekoarchi: @saijotakeoさんの「構造構成主義から考える原発再稼働について」の一連のツイートをトゥギャりました。 http://t.co/sbRuFgE7
posted at 21:22:45

感謝です! RT @kanekoarchi: @saijotakeoさんの「構造構成主義から考える原発再稼働について」の一連のツイートをトゥギャりました。 http://t.co/tYMHhAqK
posted at 21:34:37

RT @antinukes: 【明日!】明日、6/9土曜日、大阪で『再稼働ヤメロ!!!緊急デモ!!!!』ってのをやります。18時に西梅田公園集合。詳細→http://t.co/0RbpWxBQ なんや今日の夕方、野田首相が「原発再稼働の必要性を説明する」とか言うてるらしいけど、必要性より安全性が先やろが!!!
posted at 21:37:45

RT @HayakawaYukio: 絶対安全でなければ原発はやってはいけない。絶対安全はないのだから原発はやってはいけない。しごく単純な理屈だ。
posted at 21:41:57

RT @CGrinrin: @saijotakeo 反対行動というのは過激になりやすく同じ脱原発の人でも近寄りがたくなってしまいますが、西條さんの発言でそういう人も声を挙げやすくなったと思います。そして信念対立で言い争うのではなく理性的に建設的に議論できたらいいですね。兎にも角にも再稼働は信じられません。
posted at 21:47:38

RT @neco_sennyou: 「異なる関心の調停」に素直にうなずけました。しなやかでやさしい脱原発の一助となる思想だと思います/.@kanekoarchi さんの「構造構成主義から考える原発再稼働について」をお気に入りにしました。 http://t.co/pcDyeJca
posted at 21:51:13

原発と津波は違います。もう一機ドカンといったら輸出もできなくなり日本全体が沈みます。
RT @fukushimanohito: 西條先生は、高台強制移住に関しては『地元の漁師さんの生活もある、地元の人の意見も踏まえた上で、リスクを低減しつつ住み続けられる方策を探るべき』と
posted at 21:56:11

RT @tanbori1: 政治家にとって顧客とは誰か。「顧客の価値を想像してはならない。必ず顧客に聞かなければならない」(ドラッカーの五つの質問)。野田総理の顧客は国民ではないらしい。 RT @herobridge これだけ党内の反対も多く、野党も全面的に賛成している党など一つもないにも関わらず、野田1人
posted at 21:57:03

今回の国民の意見を無視した再稼働決定の手続きは、民主、党でもなく、民主主義ですらないです。 RT @tanbori1: 政治家にとって顧客とは誰か。「顧客の価値を想像してはならない。必ず顧客に聞かなければならない」(ドラッカーの五つの質問)。野田総理の顧客は国民ではないらしい。
posted at 22:01:05

RT @peejou: そんなに動かしたければ、ちゃんと整えようよ。野田さん、あなた何も仕事してない。利権に身を任せてるだけ。放射性物質による物理的な問題を無視しちゃダメでしょ。まったくおぼつかないよ、この人は。 //夏限定の原発再起動では国民生活守れぬ…http://t.co/as9yXdFc
posted at 22:01:32

すいません、僕の一連のツイートの反論には全くなっていないので@はやめて頂ければと思います。全く違う次元の議論になっているので。すいません。 RT @fukushimanohito: ですから、電源確保のために対策が急がれているわけですよね。最大震度7でも緊急停止まではできて、
posted at 22:08:40

RT @herobridge: 今日は怒りのあまり、絡まれると不適当なTweetをしてしまいそうなので、速攻ブロックする事にします!愚かなみなさん、ごめんね!
posted at 22:11:30

RT @wakanababa: こういう方向性が本当に必要と思うRT @saijotakeo: ではどうするか?再稼働させなくともすぐに安全になるわけじゃないので、補助金は減額しても打ち切らないようにする。原発の隣に火力発電所でも立てることで送電線等のシステムはそのまま使って電力を確保する。そうすることで..
posted at 22:13:03

RT @tomocofutaba: RT @kanekoarchi: @saijotakeoさんの「構造構成主義から考える原発再稼働について」の一連のツイートをトゥギャりました。 http://t.co/f4uMKQug
posted at 22:13:46

なお、ご承知の通り、今日の一連のツイートは、あくまでも西條個人の見解です。
posted at 22:21:58

同じ311といってもそれぞれ異なる体験をして、いろいろな関心があり、価値判断が生じるのは当たり前の事です。しかし、第二次世界大戦以来の国難と言われる311で失われた沢山の命や犠牲を無駄にせず、『民主主義2.0』に至るためには構造構成主義のような前に進む建設的な理路は必要です。
posted at 22:25:51

はい、どうぞ~。 RT @haryusen: 了解していますが、FBの方にも紹介させていただきました。思索を進めるたたき台となるかと。また、私自身も考える参照にしたいので。RTなお、ご承知の通り、今日の一連のツイートは、あくまでも西條個人の見解です。
posted at 22:33:22

RT @fujinamicocoro: 野田首相が原発再稼働宣言した。国会議員として最低のダメ男だと思うし、この判断は未来の日本史の中で最悪の判断だったと書かれるだろう。しかし私達はこの野田首相に怒ると共に、このどじょうぬめぬめ首相の後ろに原発を再稼働させたい本当の真犯人が居る事を忘れてはいけない #Loveハイロ 
posted at 22:41:33

RT @fujinamicocoro: 私達は「経済特攻隊」。ある特定の者達の利益の為に、絆とか、痛み分けとか、国際競争に勝つ為とか、国民生活を守るためとか。心地良い言葉で私たちを惑わしながら、遂に今日片道切符で飛び立ってしまった。大地震が来れば大爆発する原発と言う名の時限爆弾を54基抱えて #Loveハイロ 
posted at 22:41:46

RT @fujinamicocoro: 経済がダメになるから原発が必要なんじゃなくて、原発があるから経済がダメになるんだと思います。 http://t.co/WFua9CHN  #Loveハイロ
posted at 22:42:41

RT @nahocho71: 責任なんかとれるわけないのに、責任をとるといい、安全が確認できるわけないのに、確認したという。国民の生活を根こそぎ奪いながら、守るという。 それって偽証罪。詐欺師だ。 #genpatsu #原発 #原発再稼働断固反対 #報道ステーション #脱原発 #原発やめろ
posted at 22:57:02

RT @aisetto: 今まで読んだ、どんな文章より、心と頭が整理されました。憑き物がおちたような、光がみえたような。信念対立はいけない。自分がイヤだと感じている対象は何だ?これに気づいてさえいないうちに再稼働がされるなんて絶望じゃないか。いろいろゆるせなくなってきた。@saijotakeo
posted at 23:02:03

[てんさい]野田首相の再稼働演説を「謎解き」する(東京新聞「こちら特報部」2012/6/14)

「再稼働圧力がどこから出てきたのかと考えると、経団連や大企業だけでなく、米国からもあったのでは」(田中優子氏)

「(野田氏は洗濯機のカビ。) 洗濯槽にはカビが生えやすいが、少しくらいなら、ほっておく人も多い。でも、ある限界を超えると、突然手が付けられないほど大繁殖し、手遅れに」(素人の乱 松本哉氏)

「『国家を守るために国民を犠牲にする決断をした、本当は国民のことは考えていない』って言うべき」(柄谷行人氏)

「こうした言い方は詭弁を弄する際の基本。なぜなら、本来並び立つものではないから」(内田樹氏)

「薬物をやめない言い訳を滔々と主張する薬物依存者の姿に似ている」(宮崎学氏)

「野田首相は電力会社の広告塔」(高村薫氏)

転載します。

 * * * * * *

国会では、十三日も大飯原発再稼働についての質疑があったが、野田政権は「馬耳東風」に徹した。政権はひたすら儀式を重ね、再稼働へと突き進んでいる。首相が国民に直接訴えたいと開かれた八日の記者会見。そこでの演説からは、論理も倫理も欠いた政治が浮き彫りになった。危機の所存を識者の皆さんに「謎解き」してもらった。 (上田千秋、小倉貞俊)


「首相の話は、地震国日本に立地する原発そのもの。土台がしっかりしておらず、すぐに崩れてしまう」。法政大の田中優子教授(江戸学)はそう切り出した。

「一番不自然だったのは『計画停電を余儀なくされ、突発的な停電が起これば…』という部分。突発的な計画停電なんてないのに。原稿を書いた官僚が『優秀なのは自分たちだけ。それ以外の人間はバカだから、この程度の内容でだませる』と思ったんでしょうね」

田中さんは「再稼働圧力がどこから出てきたのかと考えると、経団連や大企業だけでなく、米国からもあったのでは。中国をけん制するため、いつでも日本は核武装できるという態勢にしておきたいはず」と話した。

東京・高円寺のリサイクルショップ「素人の乱」の店主で、脱原発デモを催す松本哉さんは、再稼働の演説をする野田氏の姿が「洗濯機のカビ」に重なったという。

「洗濯槽にはカビが生えやすいが、少しくらいなら、ほっておく人も多い。でも、ある限界を超えると、突然手が付けられないほど大繁殖し、手遅れになるんです」

野田氏も同様に見えるという。「就任時は影の薄い存在で、誰も気にしなかった。前首相の脱原発依存方針を踏襲していくのかと思っていたが、一気にすべてを振り出しに戻してしまった。『なんだこりゃ、この人、国民の声なんて、何も聞いてないんだな』とあきれ果てましたね」

福島県三春町在住の僧侶で、作家の玄侑宗久さんは「首相会見と掛けて、トイレの後のネコのおしりと解きます。その心は完全に(国民を)なめてます」と苦笑した。

「(大飯原発周辺の)断層が動く可能性についても、政府は原子力安全・保安院の見解をうのみにするだけ。想定外の事態が起こり得るという発想がなく、福島の経験から何も学んでいない。『国民の生活を守る』といった言い回しも、官僚が書いた原稿を読んだだけなんでしょうね」

文芸評論家の柄谷行人さんは「よくもあれだけ空疎なことが言えたと思う。『国家を守るために国民を犠牲にする決断をした、本当は国民のことは考えていない』って言うべきだ」と憤る。

「原発は国家にとって資本のエッセンスみたいなもの。国民より国際競争力が大切で、原発をやめたら経済的に不利になるから、国民はしばらく我慢しろというのが本音だ。小泉政権も『国民も痛みに耐えろ』と言ってたが、それと同じだ」

首相の「まさに私の責任で」というくだりは「振り付けた官僚が内心『こいつに責任を負わせればいい』と考えたように聞こえた」と皮肉った。

神戸女学院大名誉教授の内田樹さんは「あの演説が学生のリポートなら零点だ」と酷評した。

首相は『国民の生活を守る』という言葉を、原発の安全性確保と経済への悪影響の回避という二つの意味で使った。

内田さんは「こうした言い方は詭弁(きべん)を弄(ろう)する際の基本。なぜなら、本来並び立つものではないから。詭弁は学生に使うなと教えている。両者を並べて考えた結果、後者を優先したと説明すべきだった」と説明する。

「国の根幹の政策を決める会見で、首相がトリッキーな言い方をするのはまずい。必要な理由を諄々(じゅんじゅん)と説かれれば納得する人もいたと思うが、いくらなんでもひどい」

作家の宮崎学さんは首相演説を「薬物をやめない言い訳を滔々(とうとう)と主張する薬物依存者の姿に似ている」と表現した。

「原子力を国策にしてきたこの国では、原発推進こそ首相が堅持しなければならない最重要テーマ。いったん首相官邸に入ると取り込まれ、誰もが原発に関する重度の依存症になってしまう。いわば『原発中毒』だ」

さらに「もはや思考停止の状態。電力供給が足りないなら、政治の力でその分の需要を抑えればよいだけ。国民に対する恫喝(どうかつ)でしかない。3・11が科学万能主義の安全神話に問題を提起したのに、理解しようという姿勢はゼロ」と切り捨てた。

大阪府在住で、原発をテーマにした著作もある作家の高村薫さんは「野田首相は電力会社の広告塔であり、ただのしゃべる人形」と批判した。

「『安全は確保されているものの、安全判断の基準は暫定的なもの』という部分など明らかに矛盾している内容なのに、野田さんは滔々と話し続けた。官僚の作文にせよ、自分が発表する文章なんだからおかしいと思わなきゃいけない」

「私の責任」という点については「この人はいつまで首相をやるつもりなんでしょうね」。

「消費者として関電のやり方には不満を持っている。節電する方法はいくらでもある。関西に限らず、節電している人は全国にたくさんいるし、続けないといけない。政府は大飯を皮切りに他の原発も動かすつもり。生活を脅かすような事態は起きないと示さねば」

◆勘違い おさらい

各方面から疑問の声が上がった野田首相の再稼働演説。その勘違いをあらためて指摘しておきたい。

再稼働問題が「国論を二分」というが、早急な再稼働には圧倒的多数の国民が反対している。

「慎重には慎重を」という安全性については、原子力安全委員会の班目春樹委員長ですら、根拠である「安全評価(ストレステスト)の一次評価」だけでは、再稼働に不十分という立場だ。

さらに免震重要棟の建設やベント装置、予備電源の設置など、災害対策に不可欠な設備の着手はこれから。再稼働してすぐに大事故が起きてしまえば、対応できない。

電力需給についても、停電となれば「働く場がなくなってしまう」というが、福島原発事故では仕事のみならず、故郷や家族との暮らしを失った人たちが続出した。

関西での「15%の電力需給ギャップ」という数字も持ち出したが、関西電力自ら大阪府市エネルギー戦略会議との席上、「5%の不足」という数字を提示している。

「石油資源の七割を中東に頼っており」と強調したが、火力発電燃料の主力は現在、石炭や液化天然ガス(LNG)で石油は一割にすぎない。

加えて、火力発電はコスト高という経済的な圧迫にも言及したが、使用済み核燃料の処理費用を含めれば、原子力の発電コストの方が高くつくことはすでに明らかだ。


<デスクメモ> 反骨の弁護士、山崎今朝弥翁は関東大震災直後の朝鮮人や労働者の虐殺事件で、こう憤慨した。「噴火口を密閉したのみで安泰だと思ってるは馬鹿(ばか)の骨頂だ。何時(いつ)か一時に奮然として爆裂するは当然過ぎるほど当然…」(『地震・憲兵・火事・巡査』)。この言葉を野田首相に贈りたい。(牧)

[てんさい]なし崩し再稼動狙い 計画停電で「恫喝」(東京新聞「こちら特報部」2012/6/9)

以下、転載します。

 * * * * * *

野田佳彦首相は八日、原発の再稼働方針をあらためて訴えた。「暫定はない」と大阪市の橋下徹市長を追い込み、「国民生活が大切だ」と再稼働に慎重な民主党の小沢一郎元代表を皮肉った。主張の柱は、電力不足による計画停電の回避だ。だが、関西の首長らが大飯原発再稼働で譲歩した後も「停電恫喝(どうかつ)」は続いている。本当に原発抜きでは、計画停電は避けがたいのか。 (小倉貞俊、中山洋子)


「計画停電を回避するために最善を尽くす」。野田首相は八日、記者会見でこう強調した。

「計画停電」は原発再稼働の切り札だ。政府が先月十八日に発表した今夏の電力需給対策にも、「実施しないことが原則」としつつも「大規模な電源脱落のために準備する」ことが示された。

再稼働阻止を訴えていた関西広域連合の首長たちが“腰砕け”になったのも、計画停電の恐れだった。「環境派」で知られる滋賀県の嘉田由紀子知事ですら、「『計画停電は困る』という地元経済界からの強い要請」が容認をのむ最大の理由になった、と吐露した。

実際、滋賀経済同友会の小林正彦事務局長は「計画停電実施となれば、企業へのダメージは深刻だ。『(計画停電が)実施されないなら、再稼働は仕方がない』という声は大きい」と話した。

それほどの不安感を与える計画停電は、そもそもどんなものなのか。

電力需要が供給を上回った際に起きる大規模停電を防ぐのが目的で、事前に地域や時間帯を予告する。東京電力管内では昨年三月、計十日間にわたり実施された。一回当たり三時間ほどの停電だが、市民生活に多くの混乱をもたらした。

だが、この時の計画停電が本当に必要だったのかについては議論の余地がある。環境エネルギー政策研究所は当時、「大口契約者と結んでいる(電気料金を値引く代わりに電力使用を抑えてもらう)『需給調整契約』を生かせば、計画停電を強行しなくても電力は足りる」と試算していた。

ちなみに今夏の東電管内の電力供給力は、昨夏から柏崎刈羽原発の5~7号機が止まったにもかかわらず、約三百万キロワットも余裕が出る見通しだ。

不可解な部分もある。政府は今夏の関西電力管内での電力不足で、“最終手段”である計画停電ばかりを持ち出すが、昨夏に東電と東北電力管内で発動された「電力使用制限令」については今回、見送っている。

企業に節電を義務付ける同制限令は昨年七月、政府が約二カ月にわたって発動。大企業など大口需要家に電力使用量の15%削減を義務付けた。それが今回は見送られ、最初から一般家庭や中小零細企業にしわ寄せが集中する計画停電が、前面に押し出された。

自然エネルギーの普及に取り組むエナジーグリーンの竹村英明副社長は「今夏の電力需給は、政府も関電も昨年から分かっていたはずだ。にもかかわらず、火力発電の整備を意図的に避け、計画停電をちらつかせた。再稼働ありきの『脅し』にしか見えない」と語る。

気になるのは、関西広域連合が大飯原発3、4号機の再稼働を容認した後も、計画停電の“合唱”が続いている点だ。

関電を含めた電力各社は、計画停電を大仰に準備。緊急時のマニュアル作りにすぎない「計画停電案」を振りかざす。

これほど「計画停電」が取り沙汰されること自体に違和感はないか。

政府は原発なしの夏を「節電努力」で乗り切れるとしていた。夏の電力需給対策では、夏の約二カ月間、関西電力管内で猛暑だった二〇一〇年夏より、電力消費を15%程度抑えるよう企業や家庭に節電要請することになっている。中部、北陸、中国、四国電力にも節電を求め、その浮いた分を関西に送るという支援策もまとめていた。

この間、関西電力は、改善策を小出しにしている。四月には不足分を16・3%と説明していたが、その後に14・9%に圧縮。大阪府市エネルギー戦略会議で見積もりの甘さを再三追及され、五月中旬には、不足分を約5%にまで減らす試算を同会議に提示していた。

他の電力会社から最大百六十二万キロワットの供給を受けるほか、自社の水力発電で二十二万キロワット、卸電力取引所から十八万キロワットなどと供給を上積み。企業との需給調整契約を広げて需要を減らし、緊急時に企業から節電分を買い取る「ネガワット入札」まで考慮した。

「再稼働なしを前提にして、なんとかなるはずだった」。同会議のメンバーで富士通総研経済研究所の高橋洋主任研究員は振り返る。「不足幅はまだ縮むはずだった」

高橋氏は需給見通しの前提になっている日本全体の最大需要の計算が、大きすぎる点にも着目。「各電力会社の最大値を合算しているが、同じ日の同じ時間帯に全国のピークが一致することはない。現実には存在しない数値で、西日本のピーク需要は下がるはずだ」

同会議で、関電の需給見通しの甘さを指摘していた環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長も「節電目標に向かって議論をしていた。十分乗り切れるはずだった。しかし、先月に入り、唐突に節電を無視した『計画停電』の回避に話がすり替わった」と説明する。

この転換が関西の企業を一気におびえさせた。それが首長たちへの圧力となり、野田首相も会見で繰り返した。首相は「期間限定」という妥協案については「夏場限定の再稼働では国民生活を守れない」と拒否した。

この一言は、関西における夏場の緊急時のための再稼働という大義名分を超え、その真意がなし崩しの原発再稼働であることを示唆している。

前出の竹村副社長によると、昨年三月の震災後、都内の企業の多くは十分な節電準備もできなかったにもかかわらず、照明を落とす程度で、一~二割の電力を削減できていたという。

「東電管内の企業は省エネでコストも削減できることを経験した。節電は企業活動にとってマイナスばかりではない」と指摘しながら続ける。

「結局のところ、電気が足りるかどうかは、再稼働とは関係ない。電力事業者が昨年、禁断の計画停電を強行して東日本にショックを与えた。それを関西での再稼働への材料に使っている」。この手法は関電管内にとどまらない恐れがある。


<デスクメモ> 野田首相は原発の安全に「絶対はない」と言った。創意工夫による「原発ゼロの夏」という挑戦にも絶対はない。では、どちらを取るべきか。使用済み核燃料は処理できず、再稼働してもあふれるのは時間の問題だ。道はこうあはない」と言った。創意工夫による「原発ゼロの夏」という挑戦にも絶対はない。では、どちらを取るべきか。使用済み核燃料は処理できず、再稼働してもあふれるのは時間の問題だ。道はこうある。希望のある挑戦か。絶望しかない安寧か。敗北感に浸るにはまだ早い。 (牧)

火曜日, 6月 12, 2012

[転載]6/9 東京新聞 「核心」「こちら特報部」など



6/8夕の、あの、大飯再稼働 首相会見をうけての、6/9(ロックの日!)の東京新聞記事を数点。
長いですが、重要な内容だと思いますので、お時間を御キープの上、ぜひご一読を。

 * * * * * *

「野田首相 詭弁並べ原発必要性」2012/06/09(東京新聞)

野田佳彦首相は八日の記者会見で、国民生活への悪影響を避けるために大飯原発再稼働の必要性が高い事を訴えた。だが、必要性の根拠とした内容も冷静にみれば、そもそも再稼働と関係のないものやその正当性が疑問視されるものも入り混じっているのが実情。電力危機と原発の優位性を訴えるために詭弁を並べ立てたとの印象が拭えない。(岸本拓也記者)


■石油ショック級の痛み ~石油火力は1割程度

「石油資源の七割を中東に頼っており、輸入に支障が生じれば、かつて石油ショックのような痛みを覚悟しなければならない」と訴えた野田首相。

原発停止に伴い火力発電への依存が増加した事を念頭に置いた発言とみられるが、現在の火力発電の燃料は石炭や液化天然ガス(LNG)が主体で、価格の高い石油火力は一割程度しか使っていない。

そもそも関西電力の原油輸入先はインドネシアとベトナムが95%(二〇一〇年度実績)を占める。中東の石油輸入に支障が生じれば、国民生活への影響は大きいことは間違いないが、関西電力の電力需給に限って言えば、石油ショックと同列に語ることの根拠はない。


■安価で安定した電気 ~コスト考えると安くない

野田首相は「安価で安定した電気の存在は欠かせない」と原発の優位性も強調。ただ、原発の立地や推進などのために、国民の税金から多大な交付金や補助金が投入されたコストを考えると、決して安価な電源ではない。これは政府のコスト等検証委員会でも証明されている。

さらに、万が一の事故の際の被害額が大き過ぎるため、保険の引き受け手がなく、一般事業なら当然に掛けるべき民間保険の費用も事実上免除されていることも見せかけの安さだ。いったん事故が起きれば福島第一原発事故の損害は被害者への賠償や廃炉、除染で数十兆円に上るともいわれ「原発が安価」とはとても言えない。


■電力不足15%を強調 ~検証期間わずか3週間

野田首相は「関西での15%の需給ギャップは極めて厳しいハードル」と述べ、二〇一〇年夏並みの猛暑では「15%」の電力が不足する事を強調した。

第三者の検証委員会を経た数字ではあるが、検証期間はわずか三週間足らず。委員からは「検証できることは限られていた。省エネ効果などはまだ拡大できた」(松村敏弘東京大教授)との声も出ており、専門家の知見が十分反映されていないとの見方が根強い。

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【核心】「大飯原発再稼働 首相会見」2012/06/09(東京新聞)

関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)再稼働問題で、八日に記者会見した野田佳彦首相、長い間、再稼働が政治問題となってきたが、首相がこの件に特化して会見を開いたのは初めて。電力需要が高まる本格的な夏が近づく中、福井県の同意を引き出すために、やむを得ずマイクの前に立ったのが真相だ。再稼働で国民生活を守ることが自らの責任と語ったが、その発言になんら裏打ちはない。(関口克己・中根政人記者)


■精神論 ~「首相は権限と責任を取り違えている」

首相は二十分間の会見で「責任」「責務」を繰り返した。

「国政を預かる者として、人々の暮らしを守るという責務を放棄できない」と力説。「国論を二分している状況で一つの結論を出す。これは私の責任だ」とも語った。

首相は、再稼働反対論が強まる中、批判を覚悟で決める事を政治家の「責任」だと訴え、理解を求めようという思惑が透けて見える。だが政府高官は首相の発言を「これまでの発言内容を出ていない」と冷静に分析する。

実際、首相の言う「責任」には根拠がない。精神論に過ぎない。再稼働した原発で万が一の事態となれば、東京電力福島第一原発事故でも明らかなように、放射性汚染は広範囲に広がりかねない。その際の責任を首相自身が負い切れるものではないし、具体的な責任の取り方もない。しかも、今後いつまで政府の責任者でいるのか分からない首相が、再稼働後の原発について責任を負い続けるのは不可能だ。

首相は、再稼働判断の最終責任者が自分だという論理で「責任」と語っている。だが、民主党内からも「首相は権限と責任を取り違えている。膨大な住民から平穏な生活を奪う事故を起こしかねない再稼働に、なぜ踏み切れるのか」と疑問の声が上がる。


■不本意 ~「国民でなく福井県向け」

そもそも首相は、この日の会見を行うことは本意ではなかった。

「頭の中はすべて消費税」(首相周辺)の首相にとって、大飯原発への関心は相対的に低い。四月十三日に再稼働方針を決めた時ですら、国民に向けた説明は枝野幸男経済産業相に委ねた。

その首相がこの日会見を行った理由は、はっきりしている。福井県の西川一誠知事から「同意」の二文字を引き出すためだ。

西川氏は本来、再稼働容認派だが、京都府や滋賀県、大阪府市が反対姿勢を示す中で身動きが取れなくなっていた。関西広域連合が五月三十日に再稼働を事実上容認しても、西川氏は再稼働反対の世論が依然強い事を気にして「首相が国民に直接訴える」ことを要求していた。

首相は、西川氏の発言録を手に困惑を隠さなかったという。だが七日、枝野氏や細野豪志原発事故担当相らと会談した際、「これ以上、再稼働を遅らせることはできない」との声に押され、会見を設定した。言い換えれば会見は形式的には広く国民に訴える内容だったが、実質的には西川氏一人に向いたもの。首相は「関西を支えてきたのが福井県とおおい町だ。敬意と感謝の念を新たにしなければならない」と持ち上げてみせた。

西川氏は首相の発言を受けて「思いを国民にしっかり語っていただいたと重く受け止めている」と評価。首相は一定の目的は達成したともいえる。だが肝心の国民には会見は、どう響いただろうか。

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【こちら特報部】「大飯再稼働 首相が方針」2012/06/09(東京新聞)

野田佳彦首相は八日、原発の再稼働方針をあらためて訴えた。「暫定はない」と橋下徹市長を追い込み、「国民生活が大切だ」と再稼働に慎重な民主党の小沢一郎を皮肉った。主張の柱は、電力不足による計画停電の回避だ。だが、関西の首長らが大飯原発再稼働で譲歩した後も「停電恫喝」は続いている。本当に原発抜きでは、計画停電は避け難いのか。(小倉貞俊・中山洋子記者)

※デスクメモ 野田首相は原発の安全に「絶対はない」と言った。創意工夫による「原発ゼロの夏」という挑戦にも絶対はない。では、どちらを取るべきか。使用済み核燃料は処理できず、再稼働してもあふれるのは時間の問題だ。道はこうある。希望のある挑戦か、絶望しかない安寧か。敗北感に浸るにはまだ早い。(牧デスク)


■計画停電で「恫喝」

「計画停電を回避するために最善を尽くす」。野田首相は八日、記者会見でこう強調した。

「計画停電」は原発再稼働の切り札だ。政府が先月十八日に発表した今夏の電力需給対策にも、「実施しないことが原則」としつつも「大規模な電源脱落のために準備する」ことが示された。

再稼働阻止を訴えていた関西広域連合の首長たちが”腰砕け”になったのも、計画停電の恐れだった。「環境派」で知られる滋賀県の嘉田由紀子知事ですら、「『計画停電は困る』という地元経済界からの強い要請」が容認をのむ最大の理由になった、と吐露した。

実際、滋賀経済同友会の小林正彦事務局長は「計画停電実施となれば、企業へのダメージは深刻だ。『(計画停電が)実施されないなら、再稼働は仕方がない』という声は大きい」と話した。

それほどの不安感を与えられる計画停電は、そもそもどんなものなのか。

電力需要が供給を上回った際に起きる大規模停電を防ぐのが目的で、事前に地域や時間帯を予告する。東京電力管内では昨年三月、計十日間にわたり実施された。一回当たり三時間ほどの停電だが、市民生活に多くの混乱をもたらした。

だが、この時の計画停電が本当に必要だったのかについては議論の余地がある。環境エネルギー政策研究所は当時、「大口契約者と結んでいる(電気料金を値引く代わりに電力使用を抑えてもらう)『需給調整契約』を生かせば、計画停電を強行しなくても電力は足りる」と試算していた。

ちなみに今夏の東電管内の電力供給力は、昨夏から柏崎刈羽原発の5~7号機が止まったにもかかわらず、約三百万キロワットも余裕が出る見通しだ。

不可解な部分もある。

政府は今夏の関西電力管内での電力不足で、”最終手段”である計画停電ばかりを持ち出すが、昨夏に東電と東北電力管内で発動された「電力使用制限令」については今回、見送っている。

企業に節電を義務付ける同制限令は昨年七月、政府が約二ヶ月にわたって発動。大企業など大口需要家に電力使用量の15%削減を義務付けた。それが今回は見送られ、最初から一般家庭や中小零細企業にしわ寄せが集中する計画停電が、前面に押し出された。

自然エネルギーの普及に取り組むエナジーグリーンの竹村英明副社長は「今夏の電力需給は、政府も関西電力も昨年から分かっていたはずだ。にもかかわらず、火力発電の整備を意図的に避け、計画停電をちらつかせた。再稼働ありきの『脅し』にしか見えない」と語る。


■節電議論すり替え

気になるのは、関西広域連合が覆い原発、4号機の再稼働を容認した後も、計画停電の”合唱”が続いている点だ。

関西電力を含めた電力会社は、計画停電を大仰に準備。緊急時のマニュアル作りに過ぎない「計画停電案」を振りかざす。

これほど「計画停電」が取り沙汰されること自体に違和感はないか。

政府は原発なしの夏を「節電努力」で乗り切れるとしていた。夏の電力需給対策では、夏の約二ヶ月間、関西電力管内で猛暑だった二〇一〇年夏より、電力消費を15%程度抑えるよう企業や家庭に節電要請することになっている。中部、北陸、中国、四国電力にも節電を求め、その浮いた分を関西に送るという支援策もまとめていた。

この間、関西電力は、改善策を小出しにしている。四月には不足分を16・3%と説明していたが、その後に14・9%に圧縮。大阪府市エネルギー戦略会議で見積もりの甘さを再三追及され、五月中旬には、不足分を約5%にまで減らす試算を同会議に提示していた。

他の電力会社から最大百六十二万キロワットの供給を受けるほか、自社の水力発電で二十二万キロワット、卸電力取引所から十八万キロワットなどと供給を上積み。企業との需給調整契約を広げて需要を減らし、緊急時に企業から節電分を買い取る「ネガワット入札」まで考慮した。

「再稼働なしを前提にして、なんとかなるはずだった」。同会議のメンバーで富士通総研経済研究所の高橋洋主任研究員は振り返る。「不足幅はまだ縮むはずだった」

高橋氏は需給見通しの前提になっている日本全体の最大需要の計算が、大き過ぎる点にも着目。

「各電力会社の最大値を合算しているが、同じ日の同じ時間帯に全国のピークが一致することはない。現実には存在しない数値で、西日本のピーク需要は下がるはずだ」

同会議で、関西電力の需給見通しの甘さを指摘していた環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長も「節電目標に向かって議論をしていた。十分乗り切れるはずだった。しかし、先月に入り、唐突に節電を無視した『計画停電』の回避に話がすり替わった」と説明する。

この転換が関西の企業を一気に怯えさせた。それが首長たちへの圧力となり、野田首相も会見で繰り返した。首相は「期間限定」という妥協案については「夏場限定の再稼働では国民生活を守れない」と拒否した。

この一言は、関西における夏場の緊急時のための再稼働という大義名分を超え、その真意がなし崩しの原発再稼働であることを示唆している。

前出の竹村副社長によると、昨年三月の震災後、都内の企業の多くは十分な節電準備も出来なかったにもかかわらず、照明を落とす程度で、一~二割の電力を削減できていたという。

「東電管内の企業は省エネでコストも削減できる事を経験した。節電は企業活動にとってマイナスばかりではない」と指摘しながら続ける。

「結局のところ、電気が足りるかどうかは、再稼働とは関係ない。電力事業者が昨年、禁断の計画停電を強行して東日本にショックを与えた。それを関西での再稼働への材料に使っている」。この手法は関西電力管内にとどまらない恐れがある。

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「確証なき安全宣言 「大飯再稼働すべき」 首相、来週にも決定」2012/06/09(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012060902000145.html

野田佳彦首相は八日、官邸で記者会見し、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県おおい町)に関し「再稼働すべきだというのが私の判断だ」と表明した。東京電力福島第一原発事故の原因究明が途上にもかかわらず、首相は夏の電力確保や原発の継続性を重視。福井県の理解を得る前に最終決断の意思を示す必要があると判断した。国民に広がる安全への不安を解消できないまま、政府は再稼働に突き進み、来週にも最終決定する。 

首相は再稼働の必要性を「原発を止めたままでは日本の社会は立ちゆかない」と強調。「(関電管内が)計画停電になれば、命の危険にさらされる人、働く場がなくなってしまう人も出る。国民生活を守る。私がよって立つ唯一絶対の判断の基軸だ」と述べた。

再稼働した場合の安全面では、専門家による議論を重ねたと説明し「福島を襲ったような地震、津波が起きても事故を防止できる」と断言した。

周辺自治体が求める夏場限定の再稼働にとどめる可能性は「夏限定では国民の生活を守れない」と否定した。

大飯原発以外の再稼働方針は「個別に安全性を判断していく」と述べるにとどめた。

福井県の西川一誠知事は首相の会見を評価し、十日に再稼働の安全性を検証する県原子力安全専門委員会を開く。同委と県議会、おおい町の意見を聴き、再稼働の同意を判断する。政府は知事の同意を受け、首相と関係三閣僚の会合で再稼働を最終決定する。


■「事故防げる」根拠どこに

東京電力福島第一原発事故を受けた緊急安全対策により、重大事故は起きないはずだから、「念のため」の対策はとりあえずなくても大丈夫-。

政府が強調する大飯原発の安全性とは、この程度のものだ。崩れた「安全神話」への逆戻りそのものだ。

完了したのは、非常用の電源や冷却ポンプの多様化など必要最小限の対策までだ。

実際の事故のとき、被害をどう最小限に抑えるか、これらを検証する安全評価(ストレステスト)の二次評価は、関電を含め一社も評価をしていない。

政府は、再稼働を優先し、重要な対策でも時間のかかるものは先送りを認めた。

まずは免震施設。福島の事故では最前線基地となり、現在も現地対策本部が置かれている。「あれがなかったら、と思うとぞっとする」。東電の清水正孝前社長が八日の国会事故調でこう語った施設だ。それでも当初の放射能防護は不十分で、作業員たちを十分には守れなかった。

だが、大飯原発にはそれもなく、整備は三年先のこと。不十分な代替施設でしのぐしかない。

福島では、格納容器の圧力を下げるため汚染蒸気を外部放出するベントを迫られた。

大飯原発の格納容器の容量は、福島第一の数倍あるが、ベント設備がなく、放射性物質を除去するフィルターもない。これも設置は三年ほど先という。

福島では、原発の熱を海に逃がす海水ポンプが破壊された。ポンプを守る防潮堤が大飯原発にも造られるが、来年度のことだ。

原発の外も、重要な問題が山積みだ。

大津波が来れば、海近くの低地にある大飯や高浜原発の両オフサイトセンター(OFC)はひとたまりもない。政府は福井県内に敦賀、美浜両原発のOFCがあるから、とのんびり構えている。

放射能汚染が広域に及んだ反省から、重点防災区域を原発の半径三十キロに拡大する方針が既に出ているが、モニタリングポストの設置や安定ヨウ素剤の備蓄も遅れている。福井県の住民避難計画も、隣の滋賀県や京都府と連携せず、県内にこだわった柔軟性のない計画のままだ。

こんな状態で安全と言えるのか。「国民生活を守る」と言いながら、原発事故が起きれば、多くの人の生活が脅かされる。ほんの一年前の苦い記憶を忘れている。 (鷲野史彦記者)

木曜日, 6月 07, 2012

Fw:【お願い】写真洗浄ボランティア募集

仙台ボラセン「EGAO」さんからのメールを転載。
長期の作業なので、よろしければ情報拡散ください。

ところで現地は被害が大きかったところで、仙台市街からは相当に離れています。写真の洗浄であれば、街なかに持ってきて行ったほうが、人が集まりやすい気がするのだが。。ちょっとEGAOさんに提案してみよう。

******

津波で流れた思い出の写真などをきれいにして持ち主に届けるため、写真等の洗浄作業をお手伝い頂ける
ボランティアを募集しております。現在参加人数が少ない為、再度募集させて頂きます。
ご協力いただける方は022-266-6805まで電話にてお申込みください。
(※受付時間9時~17時)募集人数に達し次第、締め切りとさせて頂きます。
継続して参加いただける方歓迎!

内容:写真等の思い出の品の洗浄作業
活動日時:6月8日(金)~6月29日(金)
※毎週月曜日・土曜日を除く毎日募集します。
(ただし、例外的に6/20(水)・6/24(日)はお休み、6/4(月)・6/25(月)は募集となります。)

※なお、今回は6月中の活動に対する募集ですが、活動自体は7月以降も継続するものです。
7月以降の募集については、追ってご連絡させて頂きます。


住所:仙台市若林区荒井字矢取東
集合時間:9時50分
活動時間:10時~16時
集合場所:現地
交通手段:公共交通機関、自転車、原付、自家用車
持ち物:昼食、お飲み物
募集人数:各日10名
申込締切:前日の16:00まで

以上となります。
被災した方々が少しでも笑顔になれる物を届けられるように、皆様のご協力をお願い致します。

仙台市ボランティアセンター
復興支援"EGAO(笑顔)せんだい"サポートステーション
※このメールは、上記センターに登録いただいている方々に配信しております。